Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Lisez 狂い凧 (くるいだこ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 111 430 caractères · 226 écrans
私はブランデーを舐めながら、栄介に訊ねた。幾分残酷な質問とは思ったけれども。
「きっとお母さんは美人だっただろうね」
「うん。美人だった。写真を見ても判る。うちのとは比較にならん」
彼もグラスを三杯ほどあけ、頬を染めていたので、口のすべりがややなめらかになっていた。
「でも、人間の記憶って、へんなもんだな。線としてはつながっていない。ところどころがぽつりぽつりと残っているんだな。強烈なとこだけが残って、あとは消え失せてしまうんだ」
「誰だってそうだよ」
「葬式はやった筈だ。ところがどこでやったのか、どんな具合に行われたか、おれは覚えてない。だからお母さんが泣いたか、泣かなかったかと言うことも――」
後年栄介は東京の居酒屋で、城介と酒を酌み交わしながら、何かの調子であの夫婦喧嘩のことを話題にした。すると城介はそれを覚えていなかった。
「へえ。そんなことがあったのかい?」
「あれ。お前、覚えてないのか」
栄介は驚いて反問した。
「あれは夜だったから、お前がそこに居なかった筈はない」
おれがあれほどショックを受けたのに、城介は何も感じなかったのだろうか。しかし城介はウソをついたり、とぼけたりするような男ではない。