Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lisez 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 020 caractères · 131 écrans
「ニャア」と猫が啼いているのを、夢うつつのうちに聞いていると、どうもリリーの声のように思えて仕方がない。一と月も前に尼ヶ崎へ遣ってしまったものが、まさか今頃こんな所にいる筈はないが、聞けば聞くほどよく似ている。バリバリと裏のトタン屋根を蹈む音がして、直ぐ窓の外に来ているので、兎に角正体を突き止めようと急いで跳ね起きて、窓の雨戸を開けてみると、つい鼻の先の屋根の上を往ったり来たりしているのが、たいそう窶れてはいるけれどもリリーに違いないのであった。庄造はわが眼を疑う如く、
「リリー」
と呼んだ。するとリリーは
「ニャア」
と答えて、あの大きな眼を、さも嬉しげに一杯に開いて見上げながら、彼が立っている肘掛窓の真下まで寄って来たが、手を伸ばして抱き上げようとすると、体を躱してすうッと二三尺向うへ逃げた。しかし決して遠くへは行かないで、
「リリー」
と呼ばれると、
「ニャア」
と云いながら寄って来る。そこを掴まえようとすると、又するすると手の中を脱けて行ってしまう。庄造は猫のこう云う性質がたまらなく好きなのであった。わざわざ戻って来るくらいだから、余程恋いしかったのであろうに、そのなつかしい家に着いて、久しぶりで主人の顔を見たのでありながら、抱こうとすれば逃げてしまう。