Classiques japonais avec furigana
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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
Lisez 生死卍巴 (せいしまんじどもえ) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 91 598 caractères · 182 écrans
奇怪と荘厳とを一緒にしたような、妙な気持に圧迫されて、押し黙っているばかりであった。
と、浪江の囁く声がした。
「ご神体は贋物なのでございます。ご覧の通り一方の眼だけが、見ひらかれて鋭く輝いております。でももう一方の眼は潰れております。……父上は開いている一方の眼だけを、手に入れたばかりでございました。その一つの眼を基にして、あのご神体を作ったのでした」
「…………」
茅野雄は返辞をしようともせず、その輝いている一眼へ、恍惚とした眼を注いでいた。
茅野雄は自分の心持が、抑えても抑えても抑え切れないほどに、その一眼を手に入れたいという、慾望に誘惑されるのを感じた。
(あの眼の光に比べては、名誉も身分も財産も、生命までも劣って見える)
茅野雄は深い溜息をしたが、誰かが背後から押したかのように、思わず前へ突き進んだ。
いつか茅野雄は石段を上り、神殿の前に立っていた。
と、茅野雄は腕を延ばしたが、グルグルと神像の首を捲いて、右手で刀の小柄を抜くと、神像の眼をえぐりにかかった。
「あ、茅野雄様!」と恐怖に怯えた、浪江の声が聞こえて来た。しかし夢中の茅野雄の耳には、聞こえようとはしなかった。