Classiques japonais avec furigana
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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
Lisez 生死卍巴 (せいしまんじどもえ) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 91 598 caractères · 182 écrans
こう宛名が記されてある。
「なるほど」と京助は声を洩らしたが、
(ははあそうか、根津なのか。よしよし根津へ行ってやろう。……ところでここはどこなのかしら?)
で、四辺を見廻して見た。
(おやおやここは蝋燭町らしい)
夢中で小走って来たがために、神田の区域の蝋燭町という、根津とはまるっきり反対の方へ、京助は来たことに感付いた。
(いけないいけない引っ返してやろう)
で、きびすをクルリと返すと、根津の方へ歩き出した。
永い夏の日も暮れかけていて、夕日が町の片側の、駄菓子屋だの荒物屋だの八百屋だのの、店先をカッと明るめていた。妙にひっそりとした往来であって、歩いている人影もまばらである。赤児の泣き声が聞こえてきたり、犬の吠え声が聞こえてきたりしたが、それさえ貧しげな町の通りを、寂しくするに役立つだけであった。
(ここから根津へ行こうとするには、どう道順を取ったらよかろう? ……雉子町へ出て、駿河台へ出て、橋を渡って松住町へ出て、神田神社から湯島神社へ抜けて、それから上野の裾を巡って、根津へ行くのがよさそうだ。どれ)
と、云うので足を早めた。
しかし半町とは歩かない中に、京助は仰天して足を止めた。