Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
くじょしょうろく
痀女抄録
矢田 津世子
Lisez 痀女抄録 (くじょしょうろく) de 矢田 津世子 (やだつせこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 578 caractères · 65 écrans
「寿女さんの形見だ。……どうです?」
師匠は額に眺め入りながら徐かにこう問うた。
それは横一尺に縦二尺ばかりの、糸錦の地に木居の若鷹を刺繍したもので、あしらった紐のいろは鮮やかな緋色であった。若鷹は茶褐色の斑に富み、頸から胸にかけての柔毛は如何にも稚を含んでいて好もしいが、その眼、嘴、脚爪の鋭さが何んともいえず胸を衝く。わたくしは寸時眼を逸らしていたが、また、視入った。
この若鷹は斑の彩色、誇張しているとさえみえる形の一種のそぐわなさからも、実際鷹狩につかう鷹とは凡そかけはなれている。よくよく眺めると、これは一つの図模様としての美しい鷹である。円く黄色い眼も曲がった嘴も、それだけ視ると何等現実的な気韻をもっては迫ってこない。むしろ、図模様の一部分としての微妙な糸の巧みさに打たれる。しかも尚よく眺めると、この美しい図模様としての鷹は、生きて、鋭い眼で観る者を射る。いまにも羽搏き飛ぶかとみえる気韻をはらんでいる。
わたくしは作者のことを考えた。作者の魂の烈しい息づかいがここに織り込まれている。この鷹は、その作者の魂をうけて生きている。図模様の裡に生きている。