Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lisez 痴人の愛 (ちじんのあい) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 179 399 caractères · 353 écrans
十
「………何分この頃は物価高く、二三年前とは驚くほどの相違にて、さしたる贅沢を致さざるにも不拘、月々の経費に追われ、都会生活もなかなか容易に無之、………」
と、そう書いたのを覚えていますが、親に向ってこんな上手な嘘を云うほど、それほど自分が大胆になってしまったかと思うと、私は我ながら恐ろしい気がしました。が、母は私を信じている上に、悴の大事な嫁としてナオミに対しても慈愛を持っていたことは、二三日してから手許に届いた返辞を見ても分りました。手紙の中には「なをみに着物でも買っておやり」と私が云ってやったよりも百円余計為替が封入してあったのです。
十
エルドラドオのダンスの当夜は土曜日の晩でした。午後の七時半からと云うので、五時頃会社から帰って来ると、ナオミは既に湯上りの肌を脱ぎながら、せっせと顔を作っていました。
「あ、譲治さん、出来て来たわよ」
と、鏡の中から私の姿を見るなり云って、片手をうしろの方へ伸ばして、彼女が指し示すソオファの上には、三越へ頼んで大急ぎで作らせた着物と丸帯とが、包みを解かれて長々と並べてあります。着物は口綿の這入っている比翼の袷で、金紗ちりめんと云うのでしょうか、黒みがかった朱のような地色には、花を黄色く葉を緑に、点々と散らした総模様があり、帯には銀糸で縫いを施した二たすじ三すじの波がゆらめき