Classiques japonais avec furigana
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らい
癩
島木 健作
Lisez 癩 (らい) de 島木 健作 (しまきけんさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 37 753 caractères · 74 écrans
太田は夢中で側の洗面器に手をやりその中に面をつっこんだ。咳はとめどもなく続いた。そのたびごとに血は口に溢れ、洗面器に吐き出された。血は両方の鼻孔からもこんこんとして溢れ、そのために呼吸が妨げられるとそれが刺戟となってさらに激しく咳入るのであった。
洗面器から顔をあげて喪心したようにその中をじっとのぞき込んだ時には、血はべっとりとその底を一面にうずめていた。溜った血の表面には小さな泡がブツブツとできたりこわれたりしていた。一瞬間前までは、自分の生きた肉体を温かに流れていたこの液体を、太田は何か不思議な思いでしばらく見つめていた。彼は自分自身が割合に落ち着いていることを感じた。胸はしかし割れるかと思われるほどに動悸を打っていた。顔色はおそらく白っぽく乾いていたことであろう。静かに立ち上ると報知機をおとし、それからぐったりと彼は仰向けに寝ころんだ。
靴音がきこえ、やがて彼の監房の前で立ち止まり、落ちていた報知器をあげる音がきこえ、次に二つの眼が小さな覗き窓の向うに光った。
「何だ?」
太田は答えないで寝たままであった。
「おい、何の用だ?」光線の関係で内部がよくは見えなかったのであろう、コトコトとノックする音が聞えたが、やがて焦立たしげにののしる声がきこえ、次に鍵がガチャリと鳴り、戸が開いた。