Classiques japonais avec furigana
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しろいはなあかいくき
白い花赤い茎
田中 貢太郎
Lisez 白い花赤い茎 (しろいはなあかいくき) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 634 caractères · 12 écrans
夕月の光が雲の間から漏れていた。昼でさえあまり人の通らない観音山は、迷い易い小径しかついていないので、それに迷わないようにと、今日通って来たと思われる落葉の踏みひしがれたような路を、月の光に透して歩いた。
三町ばかりものぼったところで、随いて来た小径が尽きて、黄葉した雑木の茂りに突き当った。寡婦の心は周章てて来た。彼女は五六歩引返して、別の小径らしい物を見つけて、右の方に曲って往ったが、少し登るとまた木立に突き当った。彼女はますます周章てて後に引返したが、返している中に違った処に足を踏み入れていた。
……大変なことになってしまった。こんな山の中にまごまごしていたら、どんなことになるかも判らない、いっそ引返して朝になって帰ろうと思いだした。彼女は周章てて低い方へ低い方へとおりかけた。と、下の方から登って来た人影がちらと見えた。彼女は心をほっとさして立った。登って来た人影は直ぐ眼の前に来た。小作りな光沢の好い、何時もにこにこしているらしい老婆の顔が見えた。
「貴女は其処で何をなされております」と、其の老婆はにこにこしながら聞いた。
「路が判らないようになりましたから、後へ戻ろうとしてるところでございます」