Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しろいかや

白い蚊帳

宮本 百合子

Lisez 白い蚊帳 (しろいかや) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 800 caractères · 18 écrans

Aozora Bunko

なほ子は、灯のつき始めた山下辺、池の端の景色などを曇ったタクシーの窓から、それでも都会らしく感じて眺めた。

植木屋が入ったと見え、駒込の家の玄関傍に、始めて見る下草の植込みが拵えてあった。薄すり紫がかった桃色の細かい花が、繊い葉の間に咲いている。それを見ながら、なほ子は呼鈴も押さず、暗い板の間へ通って行った。茶の間の戸を開けようとしていると、

「アラ」

千世子が、おかっぱと制服の裾を膨らませ、二階から駈け降りて来た。

「お母様、工合がおわるいって?」

「ええ。お姉様いつ帰ってらしったの」

「今かえったの。――寝てらっしゃるの」

千世子は、何だか当惑そうに合点した。そして、少女らしい様子で、

「――疲れてるんだって」

と云った。なほ子は、母が下りて来るか、自分が二階へ行こうか、千世子をきかせにやった。

「今起きたところだから、三十分ばかり休みたいんですって」

なほ子は、その間に風呂へ入った。水道の湯が久しぶりで心持よく、生垣の彼方で活溌な子供の声がしたり、それより一寸遠いところでピアノの音がしていたりするのが、愉快であった。生活の泡立っている感じが、体の周囲であぶく立つ石鹸の感覚と縺れ、なほ子は何度も何度も勢よく立ったまま湯を浴びた。