Classiques japonais avec furigana
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しろくれない
白くれない
夢野 久作
Lisez 白くれない (しろくれない) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 24 846 caractères · 50 écrans
「踏めい……踏み居らぬか」
と脅やかすに初花は忽ち顔色蒼白となりつ。そを懸命に踏み堪へて、左褄高々と紮げ、脛白き右足を擡げて、踏絵の面に乗せむとせし一刹那、
「エイツ……」
と一声、足軽の棒に遮り止められ、瞬く間に裲襠を剥ぎ取られて高手小手に縄をかけられつ。母しやま/\と悲鳴を揚げつゝ竹矢来の外へ引かれ行けば、並居る役人も其の後よりゾロ/\と引上げ行く模様、今日の調べはたゞ初花太夫一人の為めなりし体裁なり。
われ不審晴れやらず。思はず傍を顧るに派手なる浴衣着たる若者あり。われと同じき思ひにて茫然と役人衆の後姿を見送れる体なり。われ其の男に向ひて独言のやうに、
「絵を踏まむとせしものを、何故に切支丹なりとて縛めけむ」
とつぶやきしに彼の若者、慌しく四周を見まはし、首を縮め、舌を震はせつゝ教へけるやう、
「御不審こそ理なれ。彼の初花楼の主人甚十郎兵衛と申す者。吾家には切支丹を信ずる者一人も候はずとて、役人衆に思はしき袖の下を遣はざりしより、彼の様なる意地悪き仕向けを受けたるものに候。あはれ初花太夫は母御の病気を助け度さに身を売りしものにて、この長崎にても評判の親孝行の浪人者の娘に候。