Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しらふじ
白藤
豊島 与志雄
Lisez 白藤 (しらふじ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 822 caractères · 16 écrans
俺のしていることは子供じみてるであろうか。いや、そんなことはどうでもよい。ただ、俺はこうしなければならなかったのだ。眼前の惨めな藤蔓を抜き去ると共に、心像の藤の花を……生かせるものなら本当に生かしてやりたい。
大陸にあった時、俺は彼女のことをしばしば思った。恋人のように想った。戦友たちに来る手紙の中には、妻からのや愛人からのが幾つもあった。俺にはそのような手紙は来なかった。然し、彼女がいることは、恋人がいるのに等しかった。愛し愛される女性を一人、どこかに持っているということは、強い生活力ともなり闘争力ともなった。
彼女の死を知ってから、俺は孤独のさびしさを知った。両親や姉妹に対する感情は、彼女に対する感情とは別種なものだった。彼女のない俺は、情緒的に孤独だった。そしてこのきびしさの中に生きようとした。そういう生き方に於て初めて、死も生も同じであるのを感じた。
戦闘らしいものもあまりなく、ただ移動彷徨をのみ続ける大陸での生活は、甚しく無意味なものに思われた。そして俺は、太平洋の中に没した耕一のことを羨ましく思った。戦争とか戦死とか、そういう事柄ではなく、ただ遠い彼方、太陽と大海との中が羨ましかったのである。