Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans
「宮のうち、どなたか御一ト方を、赤坂城に戴けますなら、士気も大いにちがいましょう」
とは正成も望んでいたところだが、同時に、菊水紋の授与は、一躍彼を天皇軍の無官の大将として遇せられたも同じである。いいかえれば、この恩賜がさらに正成の運命を絶対の極地へおいてしまったといっていい。
また、このさいの正成の心事については、後世、諸説をよびおこしている。
天皇の勅、うむなく一死をささげて起ったとする旧説と、いや彼も一類の悪党楠木だったにすぎない。天皇をかついで大いに覇を成し、栄位にありつこうとした野心家であった、と見る新説などである。
が両説ともに、一個の凡夫正成の、あわれな人とは遠いようだ。かつてはあった大伴氏らの「――大君のへにこそ死なめ」の純粋な気風はもう野にも都にもなかったし、宮廷自体が、そういう大切なものを、荒らし果たしていた。栄職争い、後宮争い、両統の帝位争奪など、百年、限りもないほどな紊れである。
ひとり野人正成だけに、後世いうが如き烈火の勤王の精神があったとするのはむりであろう。肉親の一族から郷土の老幼までを死界へ投げこむような非情はなぜしたろうか。