Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans
「お座所は、どこか」
屋の周囲を半ぶんほど巡って行くと、二つの建物をつないでいる高廊下が見え、そこの中坪らしい辺りで、ふと妻戸を開ける音がした。
高徳はすばやく高廊下の下に身をかがめた。が、紙燭をかざして、中坪の濡れ縁を通りかけた人影は、なにか不審なと、すぐ異を感じていたらしく、ふと、たたずんだまま外を見ていた。
「……?」
廉子である。
しかし田舎武者の高徳が、彼女を三位ノ典侍廉子とはもとより知ろうはずもない。彼はただその高貴な容姿から見て、帝のお側近くに仕える御息所のひとりに相違ないと思っただけである。いやそれだけでも、彼は咫尺の間に天皇の御気配を感じて、もう五体のわななきを禁じえない風だった。
「たれじゃ」
「…………」
「警固の者か?」
彼女の男まさりな気強さも、高徳には、威厳に聞えた。
廉子は怪しんだ。
「異な男よ。……立ち去らねば人を呼ぶぞえ」
ほんとに、呼び立てそうに見えたので、高徳はあわてて、
「あいや」
中坪の内へ、転び込むように這いすすみ、ことばも早口に、
「ご不審ではございましょうが、決して曲者などではありませぬ」
と、笠を脱って、平伏した。