Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(四) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 229 324 caractères · 458 écrans
と、言いつづけた。
こなたの廊の端へ来た草心尼は、びッくりして、いちどは下部のいる下屋へと走りかけたが、そんな処置の間にあわないのを見ると、われを忘れて。
「あぶないッ。待ってください。そのお人は、私のよく知っている者です。足利殿の御家来です」
このきれいな一ト声は、男の百言よりも、すぐ兵の反省を突いたらしく、遠くから兵の頭が、尼の顔をさがして言った。
「おっ、昨夜の尼前か」
「止めて給われ」
「あなたも、まちがいだと仰っしゃるか」
「まちがいです」
「ではその者は、誰だ?」
すると、ひるみかけた兵をしり目に、男自身がこう名のった。
「足利どのから御勘当の身、旧主のおん名にはかかわりはない。浪人一色右馬介ともうす者だ」
「相違ないのか、尼前」
「相違ありませぬ」
「が、念のためだ。待ってもらおう」
打ッた釘のように、兵の頭はこの配置をくずさなかった。しかしまもなくここへ来た三、四人の放免たちによる“面通し”で彼らも男が大蔵でないことを口々に証言した。――で、兵の頭も、まが悪そうに、粗忽をわびて、
「申しわけない。当の忍ノ大蔵は、はやこの附近でないとみえる。われわれも退散いたそう。