Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 116 638 caractères · 233 écrans
門のそとには百四、五十人。――正行の弟の正時、和田新発意、同新兵衛、紀ノ六左衛門、楠木将監らのほか、正成の代からの旧臣、八木ノ入道法達だの、安間了現なども、
「はて、遅い御退出、どうなされたのか」
と、みな待ちびさしげに地にすわりこんで、待っていた。
そこへ、
「やあ、すぐ行こう」
と、正行の姿だった。
声の調子には変りもなかったが、泣いたあとのような正行の瞼がたれにも気にかかった。しかしたれも訊かない。そうでなくても正行をよく知る彼らにはその人の馬上の薄い背を見るだけでも傷々しかった。
正行の小柄なのは、幼少からだが、とかくいつ頃からか薬餌になじみがちだった。病名といっては彼らも的確に知っていないが、きわだって痩せの見えてきたのを家臣たちが気にし出したのは、正行が二十歳の頃をさかいに一族や四隣から、その族長的な在り方を注目されだした時にあったといってよい。
その青春もさかりにかかって、薄い痩身を揉んでくるしそうに咳を喘いている姿などを見かけると、家臣は胸を傷めただけでなく暗然ともしたものだった。やっと咳を懐紙につつんで鎮まったあとの正行のおもては、その懐紙よりも白く、見るにしのびないものがあった。