Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 598 caractères · 254 écrans
「いかさま、高氏は幕臣ですが、そこまでの御確信と聞けば、いッそまた清々しい。――もし高氏が、かつての忍び上洛の頃、あなたとお会いしていたら、今日の高氏は、あなたと同じ獄座にいたかもしれませぬ」
心を解いて、つい高氏はこんなことまでいったが、すぐ語をかえて、彼の遺言をききとった。
俊基は、かねて獄室で写しておいた法華経一巻と、自詠の和歌の一ト綴を、妻の小右京へ送りとどけてもらいたいということと、
「また、も一つは」
と、眼をとじて言った。
「先年――佐渡ヶ島へ流された日野資朝卿も、やがては、斬に処せられようが、もし折あらば、日野俊基は事ならぬまに、吉田殿の裏切りのため、死後を恃んで、鎌倉にて死せりと、おつたえおき願わしい。……そのほかには、申し遺すこともおざらぬ。いまはただ、死後の花見を待つばかりだ」
夜もふけたので、高氏はほどなく、別れをつげて、諏訪家の門を出、月下の道を駒にまかせて大蔵の自邸へ帰って行った。
じつは大蔵の足利屋敷の内にも、事変いらい、獄囚の一人、忠円僧正が預けられていた。――その忠円も両三日中には、足利家の手で、越後ノ国へ遠流の旅につく用意の下にいたのであった。