Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しんのしゅっぱつ
秦の出発
豊島 与志雄
Lisez 秦の出発 (しんのしゅっぱつ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 532 caractères · 29 écrans
私は彼女の顔を見つめたまま立ち上って、軽く一揖した。彼女も軽く身を屈めた。――私は支那語が話せないし、彼女は日本語が話せないのだ。
秦と彼女とはなにか短い言葉を交わした。彼女は椅子に身をおろして、先の尖った細い指に※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)をもたせた。
秦が何か言うと、彼女は私の方を見てうなずいてみせ、それから二人の間にまた短い言葉が連続した。秦の調子にはやさしいいたわりがあり、彼女の調子はへんに機械的だと、私には感ぜられた。
然しそれよりも、随分と強烈な芳香が、さきほどから私の鼻をついてきた。香水の香りに何かの香りが交ったもので、私はその方にも気を取られた。――後で分ったことだが、彼女は軽い眩暈におそわれてベッドに就く時、いつも、コティーの香水をやたらにふりまかせ、白檀香をやたらに焚かせて、その緩急混合の芳香の中に浸るのだった。秦はこのことからして、彼女の所謂脳貧血は、病的症状ではなくて神経的現象だと、簡単に解決していたのである。
彼女の顔の肉は、私が居る間じゅう一度もほぐれなかった。彼女から来る芳香も薄らがなかった。
やがて秦は彼女を連れだし、暫く待たせたあとで、熱い茶を運んでくる楊さんと共に戻って来たが、私は間もなく辞し去った。