Classiques japonais avec furigana
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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
Lisez 笑う悪魔 (わらうあくま) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 27 687 caractères · 55 écrans
それから引続いて、自分の過去を顧みて、一とくさりの苦心談があり、今の事業の簡単な報告、将来への抱負を述べると、来客六十の掌が、無恥な阿諛とアルコールの興奮に、食堂一パイに高鳴りました。
丁度その時でした。正装した給仕の一人が、恐る恐る銀盆に載せた、花飾りしてある美しい手紙を一通持って来て、
「恐れ入りますが、使の者がこれを持って参りました。何事にも換えられぬ火急の用事だから、直ぐ様御前様に御目にかけるようにとのことでございます、――もし時を過せば後で屹度お叱りを受けるに違いないと――」
そっと主人席の横に滑らせるのでした。
「何んだ、祝の手紙ではないか、後で見ても差支あるまいが――」
そう言い乍らも三郎兵衛は、それでも給仕の口上の物々しさに釣られたものか、手紙を受取って、有合せの果物ナイフで封を切り、少しは面倒臭そうに、ざっと眼を通しました。と、三郎兵衛の顔はサッと一と刷毛、日頃の見事な血色を失ってしまったのです。
「どうかなさいましたか」
若い夫人が側から差覗くのを、
「いや何んでも無い、少しヒーターが熱過ぎるからだ」
そう言って大急ぎで手紙を衣嚢に入れ、手巾を取出して、額の汗を拭くのでした。