Classiques japonais avec furigana
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そろばんがこいをかたるはなし
算盤が恋を語る話
江戸川 乱歩
Lisez 算盤が恋を語る話 (そろばんがこいをかたるはなし) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 096 caractères · 16 écrans
彼の計画はまんまと失敗に帰したのです。
「だが、一度位失敗したって失望することはない。S子が気づくまで何度だって繰返せばいいのだ」
Tは心の中でそう思って、やっと気をとり直しました。そして、いつもの様に真面目くさって、与えられた仕事にいそしむのでした。
外の事務員達は、てんでに冗談をいいあったり、不平をこぼしあったり、一日ざわざわ騒いでいるのに、T丈けはその仲間に加わらないで、退出時間が来るまでは、むっつりとして、こつこつ仕事をしていました。
「十二億四千五百三十二万二千二百二十二円七十二銭」
Tはその翌日も、S子の算盤に同じ金額を弾いて、机の上の目につく場所へおきました。そして昨日と同じ様に、S子が出勤して席につく時の様子を熱心に見まもっていました。すると、彼女はやっぱり何の気もつかないで、その算盤を脇へのけてしまうのです。
その次の日もまた次の日も、五日の間同じことが繰返されました。そして、六日目の朝のことです。
その日はどうかしてS子がいつもより早く出勤して来ました。それは丁度例の金額を、S子の算盤において、やっと自分の席へ戻ったばかりの所だったものですからTは少からずうろたえました。