Classiques japonais avec furigana
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こうばいのきゃく
紅梅の客
吉川 英治
Lisez 紅梅の客 (こうばいのきゃく) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 574 caractères · 15 écrans
ひとくちに紅くさえあれば紅梅といっているが、あの紅さもいろいろである。ほんとの真紅はまったく少い。かなり紅いのでも花の顔を覗くと中はほの白くて、遠目にするとそれが淡紅に見えてしまう。しかし真の紅梅であれば色はただの緋というよりも黒緋にちかく、花芯のシベも胡麻ツブのもっと可憐なものに似ている。そしてまた枝を剪ってみると、樹皮下の木目までが、まるで梅酢で漬けた紅生姜か何ぞのようにしんのしんまでほの紅い。
薄紅梅も薄さによっては悪くないが、春さきの木隠れに、あの黒緋とも見えまた陽に映えるとその鮮紅を艶めいてみせるようなのが――それも決して大樹でなく姿は屈み腰の女ぐらいなとこが恰好だが――町の庭には一本欲しいものと、かねがね願っていたところ、いぜん疎開していた吉野村の青年が、はからずもこんなのがありましたがと、つい数日前、わざわざ花のついたのを持って来てくれて、書斎の庭前に植えてくれた。聞けば、花のついてるときが、移植にはいちばんいいのだそうである。
ゆうべ夜半に春雷があって、雹やら風が雨戸を打った。だが心配していた緋紅梅は今日もなおその妍や香いを失っていず、机仕事の私のほうへ折々ものを言いたげな容子にみえる。