Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
むらさきのびん
紫の壜
豊島 与志雄
Lisez 紫の壜 (むらさきのびん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 802 caractères · 24 écrans
彼女は酒と煙草とを私にすすめ、自分でも両方に手を出した。そしてしきりに私の話だけを聞きたがり、自分の方のことは殆んど話さなかった。それでも現在のことだけは打ち明けた。彼女は借家主のおばさんと酒場を一緒にやり、資本は彼女が出していた。おばさん夫婦は二階の六畳一間に寝起きし、夫は或る公共営団に勤めてるらしかった。室の様子では、彼女に旦那とか情人めいた男はなさそうだった。――それだけの収穫で、私は程よく辞し去った。
それから、私は財布が許す限りしばしば、彼女のところへ飲みに行くようになった。酔っぱらった揚句、一度、彼女の唇を求めたことがある。彼女は笑いながら、ほんのちょっとの間それを私に許した。全く受動的な無反応な冷たい唇だった。その代り、私は彼女の手をじっと握りしめることが多かった。それを彼女は拒まなかった。妙な工合だった。昔――そうだ、もう昔の感じだが――私たちはよく手を握り合ったものだ。彼女の家のミルクホールの片隅で、縁日の夜の暗がりで、人目をさけて手を握り合った。その昔のことが、違った色合で蘇ってきたのだ。私は焦燥に駆らるることがあった。彼女は執拗に眼を伏せていた。