Classiques japonais avec furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Lisez 耽溺 (たんでき) de 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 55 597 caractères · 110 écrans
僕は何だか吉弥もいやになった、井筒屋もいやになった、また自分自身をもいやになった。
僕が帰りかけると、井筒屋の表口に車が二台ついた。それから降りたのは四十七、八の肥えた女――吉弥の母らしい――に、その亭主らしい男。母ばかりではない、おやじもやって来たのだ。僕はこらえていた不愉快の上に、また何だか、おそろしいような気が加わって、そこそこに帰って来た。
一〇
吉弥は、よもや、僕がたびたび勧め、かの女も十分決心したと言ったことを忘れはしまい。よしんば、親が承知しないで、その決心――それも実は当てにならない――をひる返すことがあるにしろ、一度はそれを親どもに話さないことはあるまい。話しさえすれば、親の方から僕に何とか相談があるに違いない。僕の方に乗り気になれば、すぐにも来そうなものだ。いや、もし吉弥がまだ僕のことを知らしてないとすれば、青木の来ているところで話し出すわけには行くまい。あいつも随分頓馬な奴だから、青木のいないところで、ちょっと両親に含ませるだけの気は利くまい。全体この話はどうなるだろうと、いろいろな考えやら、空想やらが僕のあたまに押し寄せて来て、ただわくわくするばかりで、心が落ちつかなかった。