Classiques japonais avec furigana
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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
Lisez 自由人 (じゆうじん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 69 030 caractères · 139 écrans
わたしの方では、田島さんとの話は小康を得ていた。さっぱり要領を得ないように母をごまかしておいた。先方にも、亡父の三周忌がすんでからでも、という肚があったらしい。ところへ、思いがけないことが起った。北村さんが、酔っぱらった上のことではあるが、田島章吾さんをさんざん悪口して、あんな奴は社会の蛆虫だと言ったらしい。その話を弟から聞いて、わたしは胸がどきりとした。北村さんの二階に、あの人が、菅原洋平さんが、同居しているのだ。しかし、弟は何にも感ずいていないらしいし、北村さんはたぶん、菅原さんのことなどは匂わせなかったのだろう。そして北村さんのその悪口が、いくらか母に影響を与えたらしくも考えられる。
わたしとしては、田島さんとのことばかりでなく、すべての縁談を、中ぶらりんにしておきたかったのだ。どうせ、一つを拒絶すれば、次のが現われるにきまっている。煩わしいだけだ。柳に風、暖簾に腕押し、そういうのが、いちばん巧妙な作戦らしい。どうせソロバンの中に坐らせられてるからには、じたばたすれば怪我するにきまっている。
それにしても、ああ、時々胸が切なくなるのは、なぜだろう。