Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lisez 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 410 131 caractères · 824 écrans
の文字が読まれた。
切れ戸の燈台の灯が近づいて来たとき、軽い口調で、
「勝則」
と、呼んだ。
「はい」
「お前、光丸という芸者を知っとるか」
息を呑むように、瞬時、ためらったが、
「知って居ります」
「その芸者に、許婚があること、知っとるか?」
はっとしたはずみに、手元が狂って、櫓が外れた。
「代ってやろう」
金五郎は立ちあがって、櫓を取った。櫓臍に填めて、漕いだ。
勝則は、舳に腰を下した。父に顔をそむけ、夜光虫の光る青白い波に、瞳を落した。
「辻木の養女の光丸には、定められた男がある。来春、学校を出次第に、光丸と結婚することになっとる。……このこと、知っとったか?」
「知りませんでした」
うなだれて、力のない声で、答えた。
「そうか。そんなら、知らせとく。仲介は、友田喜造ちゅうことじゃ。そのことも、知らせとく」
船のうえには、しばらく、人間の声が絶えた。櫓の音と、かすかな波の音だけ、伝馬船は切れ戸近くに来た。すこし、波が荒くなった。
「この辺でよかろ。……勝則、一網、入れてみんか」
勝則は、無言で、立ちあがった。草履を脱いだ。網を取りあげて、舳に突っ立った。
ちょっとの間、海面を眺め、見当をつけていたが、反動をつけて、網を投げた。