Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lisez 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 410 131 caractères · 824 écrans
という街の袋物屋に、夫婦で出かけ、マンが選定したものだ。見ちがえる筈はない。
「東京駅で、ぽかんと、天井の十二支の絵を見とれとったら、その際にやられてなあ。上京の突鼻に、無一文になってしもうて、井上君から借金したよ」
金五郎は、そういう簡単な報告をしただけである。
「このライターも、借金のお土産なのね」
「昔の懐中ランプを思いだしたもんじゃけ。……よう似とろうが」
「そういえば……」
七人の親になっているのに、二人は青春の日を思いだして、くすぐったげな微笑を取りかわした。
「あのライターは、まだ、関門海峡に沈んどるか知らん?」
「平家蟹が使いよるじゃろう」
そんな馬鹿話をして、機嫌よく笑いあったのだった。
それだけに、この財布の思いがけぬ出現は、マンの胸に、えたいの知れぬ昏迷と、猜疑心とを生んだ。
仏間に持って来て、中を調べた。紙幣や、書類、印鑑、など、ごたごたしたものの中から、一通の封書が出た。
表に――玉井金五郎さま。裏がえすと――京より。すでに、封が切ってある。
マンは、ゴクッと、唾を呑みこんだ。手紙を長火鉢の上に置いた。長煙管を取り、キザミをつめると、胸を張るようにして、深々と、一服吸った。