Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lisez 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 133 224 caractères · 269 écrans

Aozora Bunko

東京市はかくの如く海と河と堀と溝と、仔細に観察し来ればそれら幾種類の水――即ち流れ動く水と淀んで動かぬ死したる水とを有する頗変化に富んだ都会である。まず品川の入海を眺めんにここは目下なお築港の大工事中であれば、将来如何なる光景を呈し来るや今より予想する事はできない。今日までわれわれが年久しく見馴れて来た品川の海は僅に房州通の蒸汽船と円ッこい達磨船を曳動す曳船の往来する外、東京なる大都会の繁栄とは直接にさしたる関係もない泥海である。潮の引く時泥土は目のとどく限り引続いて、岸近くには古下駄に炭俵、さては皿小鉢や椀のかけらに船虫のうようよと這寄るばかり。この汚い溝のような沼地を掘返しながら折々は沙蚕取りが手桶を下げて沙蚕を取っている事がある。遠くの沖には彼方此方に澪や粗朶が突立っているが、これさえ岸より眺むれば塵芥かと思われ、その間に泛ぶ牡蠣舟や苔取の小舟も今は唯強いて江戸の昔を追回しようとする人の眼にのみ聊かの風趣を覚えさせるばかりである。かく現代の首府に対しては実用にも装飾にも何にもならぬこの無用なる品川湾の眺望は、彼の八ツ山の沖に並んで泛ぶこれも無用なる御台場と相俟って、いかにも過去った時代の遺物らしく放棄された悲しい趣を示している。