Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しょうたく

荷風随筆集(下)〔全2冊〕

永井 荷風

Lisez 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 633 caractères · 74 écrans

Aozora Bunko

震災の後、上海の俳優が歌舞伎座で孫悟空の狂言を演じたことがあったが、わたくしはそれを看た時、はっきり原作の『西遊記』を記憶していることを知った。『太平記』の事が話頭に上ると、わたくしは今でも「落花の雪にふみまよふ片野あたりの桜狩」と、海道下りの一節を暗誦して人を驚すことが出来るが、その代り書きかけている自作の小説の人物の名を忘れたりまたは書きちがえたりすることがある。

鶯の声も既に老い、そろそろ桜がさきかけるころ、わたくしはやっと病褥を出たが、医者から転地療養の勧告を受け、学年試験もそのまま打捨て、父につれられて小田原の町はずれにあった足柄病院へ行く事になった。(東京で治療を受けていた医者は神田神保町に暢春医院の札を出していた馬島永徳という学士であった。暢春医院の庭には池があって、夏の末には紅白の蓮の花がさいていた。その頃市中の家の庭に池を見ることはさして珍しくはなかったのである。)

わたくしは三カ月ほど外へ出たことがなかったので、人力車から新橋の停車場に降り立った時、人から病人だと思われはせぬかと、その事がむやみに気まりがわるく、汽車に乗込んでからも、帽子を眉深にかぶり顔を窗の方へ外向けて、ろくろく父とも話をせずにいた。