Classiques japonais avec furigana
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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
Lisez 荷風随筆集(下) (くさもみじ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 30 512 caractères · 63 écrans
まだ巴里にあった頃わたくしは日本の一友人から、君は頻にフロオベルを愛読しているが、君の筆はむしろドーデを学ぶに適しているようだ、と忠告されたこともあった。二葉亭の『浮雲』や森先生の『雁』の如く深刻緻密に人物の感情性格を解剖する事は到底わたくしの力の能くする所でない。然るに、幸にも『深川の唄』といい『すみだ川』というが如き小作を公にするに及んで、忽江戸趣味の鼓吹者と目せられ、以後二十余年の今日に至ってなお虚名を贏ち得ている。文壇の僥倖児といわれるのは、けだし正宗君の言を俟つに及ぶまい。
大正改元の翌年市中に暴動が起った頃から世間では仏蘭西の文物に親しむものを忌む傾きが著しくなった。たしか『国民新聞』の論説記者が僕を指して非国民となしたのもその時分であった。これは帰朝の途上わたくしが土耳古の国旗に敬礼をしたり、西郷隆盛の銅像を称美しなかった事などに起因したのであろう。しかし静に考察すれば芸術家が土耳古の山河風俗を愛惜する事は、敢て異となすには及ばない。ピエール・ロチは欧洲人が多年土耳古を敵視し絶えずその領土を蚕食しつつある事を痛嘆して『苦悩する土耳古』