Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なおこ
菜穂子
堀 辰雄
Lisez 菜穂子 (なおこ) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 758 caractères · 173 écrans
その車の中によろめくようにお乗りになってから、森さんは私たちの方へ帽子にちょっと手をかけて会釈されたきりだった。……その車が又埃りを上げながら立ち去った後も、私たちは二人ともパラソルでその埃りを避けながら、何時までも黙って草の中に立っていた。
去年と同じ村はずれでの、去年と殆ど同じような分かれ、――それだのに、まあ何んと去年のそのときとは何もかもが変ってしまっているのだろう。何が私たちの上に起り、そして過ぎ去ったのであろう?
「さっき此処いらで昼顔を見たんだけれど、もうないわね」
私はそんな考えから自分の心を外らせようとして、殆ど口から出まかせに云った。
「昼顔?」
「だって、さっき昼顔が咲いていると云ったのはお前じゃなかった?」
「私、知らないわ……」
お前は私の方をけげんそうに見つめた。さっきどうしても見たような気のしたその花は、しかし、いくらそこらを眼で捜して見てももう見つからなかった。私にはそれが何んだかひどく奇妙なことのように思われた。が、次ぎの瞬間にはこんなことをひどく奇妙に思ったりするのは、よほど私自身の気もちがどうかしているのだろうという気がしだしていた。