Classiques japonais avec furigana
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はなばなしきしゅんかん
華々しき瞬間
久坂 葉子
Lisez 華々しき瞬間 (はなばなしきしゅんかん) de 久坂 葉子 (くさかようこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 45 114 caractères · 92 écrans
そして、金茶色の大きな半円のマべ(真珠の一種)の耳輪と腕輪をはめた。鏡を斜めにして、彼女は自分の姿をうつした。しまった胴。フレヤーのスカートがゆるやかに動いて、地模様のこまかい縞がひかる。その上に、白の毛糸のすかしあみのケープをはおり、ゴールドの靴とハンドバッグを片手に二階を降りた。時間は、六時半をとっくにまわっていた。今から、自動車にのってゆけば四十分の遅刻であろう。彼女は広い通りへ出た。五分位待った。空車は彼女の傍へとまった。彼女は自動単にのってから、ハンドバッグをあけ、つけ忘れていた香水を耳もとにふった。香水だけは阿難の香水。阿難のにおいを。彼女は小さなびんを両手で抱きしめた。それは、すぐ消える淡いにおいであった。仁科六郎に会う前は、必ずその香水をつけた。別れる時は消えるものであった。香水のにおいがよく悲劇をもたらせてしまうことを彼女はフランスの小説で知っていたからである。
――阿難、今日は阿難、じっとしていてね。その代り、南原杉子の肉体は、もうほんとにすっかり阿難のものとなっているのよ。今日、無言のうちに蓬莱建介と別離の挨拶をするわね。彼の女類の中に加えられても私は侮辱されたと思わないわ。