Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

Lisez 落ち梅記 (おちばいき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 30 748 caractères · 61 écrans

Aozora Bunko

「なんです、御法事でもあるんですか」

「ここでは申上げられませんの、わたくし先にまいってお待ち申しておりますから、そして、おばさまにはなにも仰しゃらずにいらしって頂きたいのですわ」

「――時刻はいつごろですか」

「わたくしは午にはまいっております」

こう云った由利江は、それでもう約束は定ったというように、牡丹をひと枝いただいてまいりますと云って、静かに部屋を出ていった。そのあと横庭のほうで、母といっしょに牡丹を截るらしい、やわらかな笑い声などが聞えたが、間もなくしんとなったきりで、戻って来るかと思った由利江はそのまま顔を見せなかった。あとで聞くと、挨拶はわざとせずにゆくからと云って帰ったとのことだった。

後になって思い返すと、それが金之助の半生における平穏な生活の最後の日であった。それまでは単に兆しに過ぎなかったものが、その日を区切りにしてかたちを現わし始め、やがて厳しい風雪の中へ彼をまきこんだのである。――二十五歳のその日まで、まったく金之助は平和と幸福に包まれて育った。彼には三つ年上の兄があったけれど、ごく幼いうちに死んだあと弟も妹も生れず、彼はひとり息子として父母や周囲の者から一倍たいせつにされた。