Classiques japonais avec furigana
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うすこうばい
薄紅梅
泉 鏡花
Lisez 薄紅梅 (うすこうばい) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 61 133 caractères · 122 écrans
手繰り集めた杯の裡が、光るばかりに漆を刷く。と見ると、毛先がおのずから動いて、杯の縁を刎ね、灰に染めじ、と思う糸七の袖に弛く掛りながら、すらすらと濡縁へ靡いたのである。
この瞬間、誰が、その藍染川、忍川、不忍の池を眺めた雪の糸桜を憶起さずにいられよう。
見る見る、黒髪に散る雪が、輝く膚を露呈して、再び、あの淡紅色の紗綾形の、品よく和やかに、情ありげな背負揚が解け、襟が開け緋が乱れて、石鹸の香を聞いてさえ、身に沁みた雪を欺く肩を、胸を、腕を……青大将の黒い歯が、黒い唾が、黒い舌が。――
糸七は拳を固めて宙を打った――「この狂人」――「悪魔が憑いたか、狂わすか、しまったり」……と叫びつつ、蝦蟇を驚かしつつ、敷きわがね、伸び靡いた、一条の黒髪の上を、光琳の錦を敷いた木の葉ぢらしの帯の上のごとく、転々として転げ倒れた。
「光邦様、光邦様。」
ぎょっとすると、お滝夜叉。
「あい、お手紙。ほら、さっき来たんだけれどね、ね、花嫁が妬くと悪いから預っといたのよ、えらいでしょう。……女の人の手紙なんですもの。」
――お伽堂、時より――で、都合で帰郷する事になり、それにつけ、いつぞや、『たそがれ』