Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Lisez 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 198 559 caractères · 401 écrans

Aozora Bunko

坊っちゃんは機を見て奇麗に引き上げる事を知らぬ。

「ホホホ私は清姫のように追っ懸けますよ」

男は黙っている。

「蛇になるには、少し年が老け過ぎていますかしら」

時ならぬ春の稲妻は、女を出でて男の胸をするりと透した。色は紫である。

「藤尾さん」

「何です」

呼んだ男と呼ばれた女は、面と向って対座している。六畳の座敷は緑り濃き植込に隔てられて、往来に鳴る車の響さえ幽かである。寂寞たる浮世のうちに、ただ二人のみ、生きている。茶縁の畳を境に、二尺を隔てて互に顔を見合した時、社会は彼らの傍を遠く立ち退いた。救世軍はこの時太鼓を敲いて市中を練り歩るいている。病院では腹膜炎で患者が虫の気息を引き取ろうとしている。露西亜では虚無党が爆裂弾を投げている。停車場では掏摸が捕まっている。火事がある。赤子が生れかかっている。練兵場で新兵が叱られている。身を投げている。人を殺している。藤尾の兄さんと宗近君は叡山に登っている。

花の香さえ重きに過ぐる深き巷に、呼び交わしたる男と女の姿が、死の底に滅り込む春の影の上に、明らかに躍りあがる。宇宙は二人の宇宙である。脈々三千条の血管を越す、若き血潮の、寄せ来る心臓の扉は、恋と開き恋と閉じて、動かざる男女を、躍然と大空裏に描き出している。