Classiques japonais avec furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lisez 蜘蛛の夢 (くものゆめ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 147 189 caractères · 298 écrans
頼まれて六兵衛もさすがにおどろいた。ほかの鳥ならばなんでも引受けるが、慈悲心鳥の飼い方ばかりは彼にも判らなかった。しかも生れつきの強情と、強い自信力とがひとつになって、彼はとうとうそれを受合った。育ったらば東京へ報らしてくれ、受取りの使いをよこすからと約束して、磯貝は二百円の飼育料を六兵衛にあずけて帰った。
名山の霊鳥を捕るというのが怖ろしい、更にそれを人間の手に飼うというのは勿体ないと、妻のお鉄と娘のお冬とがしきりに意見したが、六兵衛はどうしても肯かなかった。かれは深い興味をもってその飼い方をいろいろに工夫した。そうして、どうやらこうやら無事に卵を孵したが、雛は十日ばかりで斃れてしまったので、かれの失望よりも妻の恐怖の方が大きかった。お鉄はその後一種の気病みのように床について、ことしの三月にとうとう死んだ。磯貝から受取った二百円の金は、妻の長煩らいにみな遣ってしまって、六兵衛の身には殆ど一文も付かなかった。しかし慈悲心鳥の斃れたことを彼は東京へ報らせてやらなかった。磯貝の方からも催促はなかった。
そのうちに今年の夏がめぐってきて、磯貝は再びこの町に来た。