Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

みかん

蜜柑

佐左木 俊郎

Lisez 蜜柑 (みかん) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 618 caractères · 14 écrans

Aozora Bunko

慥かに誰かが来ている。――とお婆さんは思った。そう思った瞬間、客があるという意識で、お婆さんは小児のような心理状態に置かれた。

「松! 松! 松はいねえがあ?」

お婆さんは、咽喉に引っ掛かるような声を搾って、二番目の孫娘を呼んだ。併し、それにはなんの答えもなかった。

「松! 水一杯呑ませで呉ろちゃ。」と、お婆さんは続けた。そして咽喉をごくりと言わせた。

やはり、なんの答えも返っては来なかった。一時杜絶えた囲炉裏端の話し声は、再びひそひそと続けられているらしかった。お婆さんは、青い静脈の浮いている瞼を静かに閉じた。そして唇を動かした。また咽喉がごくりと鳴った。

「駄目だ駄目だ。水なんか呑ませじゃ駄目だ。婆様は水を呑ませっとすんぐに寝小便だから……」

こう言っている声を、たしかにそう言っている声をお婆さんは聞いたように思った。

蒼白い瞼の陰には、いろいろな場面が繰り展げられた。六十幾年間の自分自身の苦闘の姿であった。そこには、寝小便ばかりではない。食事最中にまで、自分の懐で糞をした伜や孫がいた。そして、一旦老衰の床に就くと、一杯の水さえ自由に与えられない自分自身の姿が、自分の瞼の裏に描かれていた。