Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

Lisez 血ぬられた懐刀 (ちぬられたかいとう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 35 586 caractères · 71 écrans

Aozora Bunko

で、フラフラと家を出て、近くの花園の森へまで、来るともなしに来たのであった。

萩野は松の木へ額をあて、じっと物思いに沈んでいる。

木洩れの月光が森の中へ、薄蒼い縞を投げている。それに照らされた萩野の肩の、寂しそうなことと云うものは!

と、その肩が顫え出した。すすり泣いている証拠である。

「小四郎様と比較て、秋安様の親切だったことは! そういうお方を振りすてて、小四郎様へ気を向けたのは、妾の愚かというよりも、魔が射したものと思わなければならない。そのあげくに妾は捨られたのだ。誰にも逢わす顔がない。ましてや今さらオメオメと、秋安様とは逢うことは出来ない。ちょっとした心の迷いから、二つの恋を失ってしまった」

限りない絶望と悔恨とが、今や萩野をとらえたのである。

「ああこの森で秋安様と、幾度媾曳をしたことやら。そのつど何と秋安様が、妾を愛撫して下すったことやら。思い出の多い花園の森! 一本の木にも一つの石にも、忘れられない思い出がある」

フラフラと萩野は歩き出した。

「ああここに杉の木がある」

一本の杉の木へ手を触れたが、しずかに幹を撫で廻した。

「この木の幹に背をもたせかけて、はじめて秋安様がこの妾へ、恋心をお打ち明け下されたのは、一年前の今頃であった。