Classiques japonais avec furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lisez 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 970 caractères · 176 écrans
それが生物であったならば、彼は紙帳を抱き締めたであろう。彼はやにわに紙帳の裾をかかげた。
「あッ」
彼は驚きで胸を反らせた。
新鮮な果実
紙帳の中に、彼の眼前に、彼以外の紙帳の主がいるではないか。そう、紙帳を箱とすれば、箱へ納まった京人形のように、一人の美しい娘が、謹ましくはあったが、充分寛いだ姿で、安らかに、長々と寝て、眠っているではないか。
(無断で俺の巣へ入り込んだ女め!)
憤怒が勃然と左門の胸へ燃え上がった。
(だが、女だ、綺麗な娘だ!)
左門の、少し黒ずんで見えていた唇へ、赤味が注し、眼へ光が射した。
左門は紙帳の中へはいった。彼は娘の顔をつくづくと見た。
(見覚えがある。飯塚薪左衛門の娘、栞だ!)
事の意外に左門はまたも驚いた。
過ぐる夜、飯塚家へ泊まった時、挨拶に出た栞という娘が、この紙帳の中に眠っていようとは!
(不思議だなア)
左門は両眉の間へ皺を畳んだ。
(しかし、栞であろうと誰であろうと……)
左門は、やがて地に腹這い、蛇が鎌首を持ち上げるように、首を上げ、頤の下へ両手を支い、栞の姿をながめていた。栞は、そんなこととも知らず、片腕を枕にして、眠りつづけていた。