Classiques japonais avec furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lisez 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 970 caractères · 176 écrans
という声が聞こえた。
頼母の声であった。
「左門!」と、その声は叫んだ。「我は伊東頼母、先夜は府中武蔵屋で、むざむざ取り逃がしたが、再度ここで巡り合ったは天の祐け! 父親の敵、今度こそは遁がしはせぬ! 出て来て勝負を致せ!」
「頼母様アーッ」
と、その声を聞いて、まず呼ばわったのは、栞であった。
「頼母様アーッ、妾、栞でござりまする! ……今日あたりお帰りくださりましょうかと、心待ちに待っておりましたところ! おお、やっぱりお帰りくだされましたか! ……それにいたしても変った所で! 頼母様アーッ」
と、栞は、叫び叫び、紙帳の裾をかかげ、外へ出ようとした。しかし、その栞は、背後から、左門の手によって引き戻された。
「伊東頼母氏か。……紙帳の中におる者は、いかにも五味左門、貴殿父上の敵じゃ! ……が、頼母殿、紙帳の中には、もう一人人がいる! 飯塚薪左衛門殿の娘栞殿じゃ! ……いや、驚き申したわ。栞殿に恋人のあること、たった今、この帳中で、栞殿より承ってござるが、その恋人が、貴殿、頼母殿であろうとは!」
左門は、そう云い云い、刀の柄を右手で掴んだが、一振りすると鞘を飛ばせ、蒼光る刀身を、頼母のいると覚しい方へ差し付けた。