Classiques japonais avec furigana
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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
Lisez 親鳥子鳥 (おやどりことり) de 佐々木 邦 (ささきくに) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 828 caractères · 181 écrans
しかし余程昔に相違ない。お母さんも髪の毛のあるお祖父さんは何うも思い出せないと言っている。
「いや、確かに禿げていましたよ。禿げているという印象が残っていますし、もう一つ私に疚しいことがありますから、未だに忘れられません」
と荒川さんは果して納得しなかった。
「いや、少しはありましたよ。少将になってから皆無になったのです。何うも俺の髪の毛は甚だ意地の悪い髪の毛ですよ」
「何ういう次第ですか?」
「俺は若い時分に小松宮さまの御風采が大層およろしいと思って、殿下のように髪を分けたいものだと念がけていました。しかし昨今と違ってあの頃の陸軍は本式でしたから、少中尉は無論のこと、佐官でも一分刈りです。将官にならなければ髪は分けられません。まあまあそれまで辛抱しようと諦めていましたが、出世よりも毛の脱ける方が速かったのです。少佐ぐらいから禿げ始めて、大佐になった頃は帽子を被ったまま顔を洗うという始末です」
「何ですか? お呪禁ですか? その帽子を被って顔を洗うというのは」
「いや額が禿げ上って顔と頭が地続きになってしまったのです。帽子を被れば、それ、国境が分る」
とお祖父さんは得意だった。