Classiques japonais avec furigana
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うたせてやらぬかたきうち
討たせてやらぬ敵討
長谷川 伸
Lisez 討たせてやらぬ敵討 (うたせてやらぬかたきうち) de 長谷川 伸 (はせがわしん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 752 caractères · 22 écrans
「命が惜しいか、逃げ損ねてその体か、非力者のそのざま、何事じゃ、卑怯者ッ」
慎九郎は踏み込むたよりがあれば、炎を衝いて駈け込みそうに、ぐるぐると走り歩いた。きいと才蔵は、そうはさせまいと跟いて歩いた。
焔は次第に高く毒舌を吐いた、黒煙は板屋を包んで峰の如く宙にのぼった。
日は全く暮れてしまった。盤木を叩く音が息忙しなく、頻りに流れていた。
風が不思議ないたずらをして見せた。高くのぼっていた黒煙が、吹きなびかされて板屋の上は、金色に映え冴えて見えた。
宮内はまだ、そこに死んでいるのではなかった、大刀を杖に、棟を跨いで突っ起ったが、乱髪を一とふり振った。
「敵を討てまい、この敵が討てまい」
焔と煙が宮内を包んだ。地上の三人は息をのんで、ただ棒立ちになって仰いだ。
やがて風のいたずらが又はじまった。宮内は棟木に抱きついてはいたが、まだ死んでない証拠に、乱髪を一ふり振った、しかしその髪の毛は焼けて短かくなっていた。
「死んでも討たれてはやらぬ!」
人間の声が、これほどに高く響きが強いものか、慎九郎夫婦も才蔵も、耳許で怒鳴られたように聞いた。
棟は、ほどなく焼け落ちた。