Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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うたせてやらぬかたきうち

討たせてやらぬ敵討

長谷川 伸

Lisez 討たせてやらぬ敵討 (うたせてやらぬかたきうち) de 長谷川 伸 (はせがわしん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 752 caractères · 22 écrans

Aozora Bunko

折よく重役の評定がはじまって追討派と非追討派とが、今論争中だという報があったので、慎九郎はその方へ耳を傾け、宮内からなるべく遠ざかろうとしたかった。

宮内は逃さなかった。わざわざ慎九郎の後へきて、その袖をひいて詰った、その顔つきは蒼さが先ほどよりはよほど濃くなっていた。

「前後をよく弁えてから物はいうものじゃ、第一の着到はかくいう弓削田宮内じゃ、お歴々といえども、着到順から申せば皆後じゃ」

「なに、そうか、手柄じゃのう、したが生憎と武芸下手でいかぬわい」

慎九郎は、男の面目として、殊に一人の女を争って勝利に誇る日が、目前に近づいている慎九郎だ、恋争いに敗れた宮内から、一本うち込まれて、閉口し放しでいられなかった。

◇

宮内が思いをかけた女は、矢作治部太夫の娘きいであった。そのきいには慎九郎も、熱心に執着して争った。

泰平の御代と、人は口癖にいっていたが、その泰平は的にならない気がした頃のことだ、色の白い、骨細の優男の宮内より、逞しい体をもって、力も人並以上あり、起居も雄々しい慎九郎の方が、治部太夫の娘の気に入った。

恋争いに敗北した宮内は、その原因が武勇の劣ったことにあると聞いて、口の傍が頻りにひきつる気もちがした。