Classiques japonais avec furigana
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ちゅうもんちょう
註文帳
泉 鏡花
Lisez 註文帳 (ちゅうもんちょう) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 770 caractères · 67 écrans
それを考えれば酒も咽喉へは通らぬのを、いやそうでない。魂魄この土に留まって、浄閑寺にお参詣をする私への礼心、無縁の信女達の総代に麹町の宝物を稲荷町までお遣わしで、私に一杯振舞うてくれる気、と、早や、手前勝手。飲みたいばかりの理窟をつけて、さて、煽るほどに、けるほどに、五助さん、どうだ。
私の顔色の悪いのは、お憚りだけれど今日ばかりは貧乏のせいでない。三年目に一度という二日酔の上機嫌じゃ、ははは。」とさも快げに見えた。
夕空
十一
時に五助は反故紙を扱いて研ぎ澄した剃刀に拭をかけたが、持直して掌へ。
折から夕暮の天暗く、筑波から出た雲が、早や屋根の上から大鷲の嘴のごとく田町の空を差覗いて、一しきり烈しくなった往来の人の姿は、ただ黒い影が行違い、入乱るるばかりになった。
この際一際色の濃く、鮮かに見えたのは、屋根越に遠く見ゆる紅梅の花で、二上屋の寮の西向の硝子窓へ、たらたらと流るるごとく、横雲の切目からとばかりの間、夕陽が映じたのである。
剃刀の刃は手許の暗い中に、青光三寸、颯々と音をなして、骨をも切るよう皮を辷った。
「これだからな、自慢じゃあねえが悪くすると人ごろしの得物にならあ。