Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ろじょう

路上

芥川 竜之介

Lisez 路上 (ろじょう) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 539 caractères · 87 écrans

Aozora Bunko

と、辰子は静に眼を俊助の顔へ移して、

「違わないと御思いになって?」

「さあ――僕は違いそうもありませんね。それよりあなたはどうです。」

「私? 私はどうするでしょう。」

辰子は誰に尋ねるともなくこう云ったが、急に青白い頬に血の色がさすと、眼を白足袋の上に落して、

「わからないわ。」と小さな声を出した。

俊助は金口を啣えたまま、しばらくはただ黙然と辰子の姿を眺めていたが、やがてわざと軽い調子で、

「御安心なさい。あんたなんぞは失恋するような事はないから。その代り――」

辰子はまた静に眼を挙げて俊助の眉の間を見た。

「その代り?」

「失恋させるかも知れません。」

俊助は冗談のように云った言葉が、案外真面目な調子を帯びていたのに気がついた。と同時に真面目なだけ、それだけ厭味なのを恥しく思った。

「そんな事を。」

辰子はすぐに眼を伏せたが、やがて俊助の方へ後を向けると、そっとピアノの蓋を開けて、まるで二人をとりまいた、薔薇の※(「均のつくり」、第3水準1-14-75)いのする沈黙を追い払おうとするように、二つ三つ鍵盤を打った。それは打つ指に力がないのか、いずれも音とは思われないほど、かすかな音を響かせたのに過ぎなかった。