Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ろじょう

路上

芥川 竜之介

Lisez 路上 (ろじょう) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 539 caractères · 87 écrans

Aozora Bunko

その雨の中を歩いて行く俊助の心は沈んでいた。彼は藤沢の声を思い出した。大井の顔も思い出した。それからまた彼等が代表する世間なるものも思い出した。彼の眼に映じた一般世間は、実行に終始するのが特色だった。あるいは実行するのに先立って、信じてかかるのが特色だった。が、彼は持って生れた性格と今日まで受けた教育とに煩わされて、とうの昔に大切な、信ずると云う機能を失っていた。まして実行する勇気は、容易に湧いては来なかった。従って彼は世間に伍して、目まぐるしい生活の渦の中へ、思い切って飛びこむ事が出来なかった。袖手をして傍観す――それ以上に出る事が出来なかった。だから彼はその限りで、広い世間から切り離された孤独を味うべく余儀なくされた。彼が大井と交際していながら、しかも猶俊助ズィ・エピキュリアンなどと嘲られるのはこのためだった。まして土耳其帽の藤沢などは……

彼の考がここまで漂流して来た時、俊助は何気なく頭を擡げた。擡げると彼の眼の前には、第八番教室の古色蒼然たる玄関が、霧のごとく降る雨の中に、漆喰の剥げた壁を濡らしていた。そうしてその玄関の石段の上には、思いもよらない若い女がたった一人佇んでいた。