Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

かとにん

過渡人

豊島 与志雄

Lisez 過渡人 (かとにん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 206 caractères · 41 écrans

Aozora Bunko

眠るのが一番頭のためにお宜しいですよ。」

矢島さんはそう云う妻の顔をつくづく眺めたが、やがて外のことに話を向けた。

「みんな大変遅いね。」

「だってまだ汽車の時間にはならないではありませんか。それに文子と慎吉と二人きりですから、どんな処をぶらついて来るか分りはしません。」

「それでいいんだ。」

然し矢島さんはその晩早くから床に就いた。夕方帰って来た文子と慎吉とが種々なことをベチャベチャ常子に話していたことをふと思い出したが、矢島さんはそれをしいて払いのけるようにして眠りに入った。彼は何かしら疲れ切ったような感覚を身内に覚えた。

訳の分らない頼り無いような悪夢を感じて、ふと矢島さんが眼を覚したのは夜中であった。

彼は半ば夢心地に囚えられながら、ざっと眼を見開いてみた。あたりが静かでことりとの物音一つしなかった。二燭光の電気がぼんやり室の中を輝らしていた。その時彼は俄にある不吉な不安を室の中に感じて身を震わした。然しそれは一瞬間のうちに過ぎ去った。深い夜と静寂とがまた彼の心に寄せて来た。傍の蒲団に眠っている常子の姿が矢島さんの眼を引きつけた。彼女は口を少し開いたままがくりと頸を枕に押しつけて正体もなく眠りに入っていた。