Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
かとにん
過渡人
豊島 与志雄
Lisez 過渡人 (かとにん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 206 caractères · 41 écrans
然し、「それだけだ」という過去に投げらるべき言葉が、俺の現在に向って眼を見開いている、そして俺の未来に向っても眼を見開いている。そのために別に俺は自己に不安は感じないけれど、俺の心は何かをじっと待っている。いや必然に俺の心は何か俺の知らないものを感じている。……今に何かが、素敵なことが、起りそうな気がする。或はまた何も起らないかも知れないような気もする。
今日は綺麗に晴れていたので、俺は少し廻り途をして郊外の方から家に帰った。うち晴れた空と心地よく濡った大地と、それから冬から春に変りゆく太陽の輝かしい柔い光線、こんな日に少しばかり郊外の途を辿るのは確かに新鮮な悦びであらねばならぬ。俺の心は陶然としていた。そしてひどく惘然としていた。俺は、この自然の新鮮な気を亨楽しながら何か物を忘れたような形であった。安らかではあったが満たされてはいなかった。――こう云う心持ちはこの頃屡々俺を襲うて来るようだ。昔は俺は余りこの「自忘の安逸」を解しなかった。或は少なくともこの「自忘の安逸」の底を浸して流るる「満たされざる自覚」を知らなかった。青年時代にこれに似た感情を経験したことはあるが、それは全く色彩の異ったものであった。