Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

とおのへ

遠野へ

水野 葉舟

Lisez 遠野へ (とおのへ) de 水野 葉舟 (みずのようしゅう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 55 903 caractères · 117 écrans

Aozora Bunko

「何か用ですか?」と言って、人をしゃくるような顔をしている。

「ちょっと聞きたいことがあるんだが……」と言ったが、自分はそのあとを聞く気がなくなった。で、手提げの中から、鏡を出し、櫛や、ブラシを出して、いま洗って来た髪に櫛を入れながら、黙っていた。しばらくして、

「中学の先生で、吉井って人がいるか? 分らないかね。」と聞くと、

「え、おいでです。ですが、たしかどこかに行って留守かもしれません。いま下で聞いて見ましょう。家によくおいでになります。」と、早口に一句ずつ句切って言ったが、そのまま、じっと坐ったなりに自分の髪を整えるのを見ている。

その時に自分は香油の壜を出して、油を手の平に移して髪につけた。嗅ぎ馴れた香だが、心持ちのいい香が、身の廻りに漂った。――このボケーの香のする香油を髪につけるのは自分には長いあいだの習慣だ。柔かなボケーの香はもう自分の香のように親しい。

で、髪をチャンと分けると、自分は立って、道具一切を床の間の、違い棚の上に置いた。そして元の座に帰えると、その男は坐ったまま一心に自分を見ていた。

その男は物珍らしそうにじっと自分の顔を見ていた。