Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

とかいのゆうき

都会の幽気

豊島 与志雄

Lisez 都会の幽気 (とかいのゆうき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 559 caractères · 21 écrans

Aozora Bunko

或る夜一時頃、私は電車から降りて下宿へ帰っていった。その時私は可成り酔っていた。四五人の友人と馬鹿げた遊びをして、その帰りにまた珈琲店へ立寄ったので、和洋酒混合の雑然とした酔い方をして、頭の中が呆けたように茫っとなって、ただ眼だけに意識の力が集っているという状態だった。それと見て飛び乗った赤電車の中の、粗らな乗客の総毛立ったような顔や、じっと考え込んでいるらしい冷たい顔や、一方にかたまって居眠りしてる四五人の車掌の顔や、天井から下ってる宣伝ビラの赤文字や、窓硝子についている仄白い汚点など、弱々しい薄赤い電燈の光りに輝らされたさまざまの、深夜にふさわしい事物が、頭の奥に残っていて、それでもまだ何か足りない、今に何かやってくる……といったような気持が、寂然とした裏通りを透して見てる眼に集っていた。それに自ら気付いた時私は、また例のものがついて来るぞと思った。途端に、何か人の顔らしいものが、横手の暗がりから私の方を覗き込んできた。おや! と思って眼をやると、もうそれらしいものは消え失せて、垣根の上から覗き出している樫の一枝が、黒々とした影を落してるばかりだった。