Classiques japonais avec furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lisez 野菊の墓 (ななこ) de 伊藤 左千夫 (いとうさちお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 271 caractères · 144 écrans
かぎろいの春の光、見るから暖かき田圃のおちこち、二人三人組をなして耕すもの幾組、麦冊をきるもの菜種に肥を注ぐもの、田園ようやく多事の時である。近き畑の桃の花、垣根の端の梨の花、昨夜の風に散ったものか、苗代の囲りには花びらの小紋が浮いている。行儀よく作られた苗坪ははや一寸ばかりの厚みに緑を盛り上げている。燕の夫婦はいつしか二つがいになった、時々緑の短冊に腹を擦って飛ぶは何のためか。心長閑にこの春光に向かわば、詩人ならざるもしばらく世俗の紛紜を忘れうべきを、春愁堪え難き身のおとよは、とても春光を楽しむの人ではない。
男子家にあるもの少なく、婦女は養蚕の用意に忙しい。おとよは今日の長閑さに蚕籠を洗うべく、かつて省作を迎えた枝折戸の外に出ているのである。抑え難き憂愁を包む身の、洗う蚕籠には念も入らず、幾度も立っては田圃の遠くを眺めるのである。ここから南の方へ十町ばかり、広い田圃の中に小島のような森がある、そこが省作の村である。木立の隙間から倉の白壁がちらちら見える、それが省作の家である。
おとよは今さらのごとく省作が恋しく、紅涙頬に伝わるのを覚えない。
「省さんはどうしているかしら、手紙のやりとりばかりで心細くてしようがない。