Classiques japonais avec furigana
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きんぎょりょうらん
金魚撩乱
岡本 かの子
Lisez 金魚撩乱 (きんぎょりょうらん) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 999 caractères · 67 écrans
この菜の花の平野に囲まれた清艶な小都市に、復一は滞在して、いろいろ専門学上の参考になる実地の経験を得たが、特に彼の心に響いたものは、この郡山の金魚は寛永年間にすでに新種を拵えかけていて、以後しばしば秀逸の魚を出しかけた気配が記録によって覗えることである。そして、そこに孕まれた金魚に望むところの人間の美の理想を、推理の延長によって、計ってみるのに、ほぼ大正時代に完成されている名魚たちに近い図が想定された。とはいえ、まだまだ現代の金魚は不完全であるほど昔の人間は美しい撩乱をこの魚に望んでいることが、復一に考えられた。世は移り人は幾代も変っている。しかし、金魚は、この喰べられもしない観賞魚は、幾分の変遷を、たった一つのか弱い美の力で切り抜けながら、どうなりこうなり自己完成の目的に近づいて来た。これを想うに人が金魚を作って行くのではなく、金魚自身の目的が、人間の美に牽かれる一番弱い本能を誘惑し利用して、着々、目的のコースを進めつつあるように考えられる。逞ましい金魚――そう気づくと復一は一種の征服慾さえ加っていよいよ金魚に執着して行った。
夏中、視察に歩いて、復一が湖畔の宿へ落付いた半ヶ月目、関東の大震災が報ぜられた。